1 平成27年度
1.51 2015.11.7 13:00~17:00「「第4回CST研究会」

講座「第4回CST研究会」実施報告

 

日時:平成27年11月7日(土) 13:00~17:00

場所:    埼玉大学教育学部

受講者:20名(教員等13名,学生7名)

講師:    小倉 康(埼玉大学教育学部准教授)

領域:    Ⅲ 小中学校実践理科指導法・マネジメント実習

 

概要:土曜日午後に「小中学生に,よく分かる,大好きな理科を届けるために」をキャッチフレーズとして,県内外で理科を教えている教員が自由に参加できる研究会を開催している。

日程:

13:00-13:40  1時間目 埼玉県の情報

テーマ「平成27年度全国学力学習状況調査の結果を受けて」

 塚田昭一(埼玉県教育局市町村支援部義務教育指導課主任指導主事)

13:50-14:50  2時間目 福井県の情報

テーマ「福井県の理科教育とCST事業の役割」

 淺原雅浩(福井大学地域科学部教授)

15:00-16:40  3・4時間目 CST・CSTマスター教員からの情報

テーマ「小中学生に,よく分かる,大好きな理科を届けるために」

情報1「中学校CSTとしての小中学校での取り組み」井形哲志(上尾市立大石中学校)

情報2「児童・教員がより理科を好きになるための工夫」松井 健(さいたま市立上里小学校)

内容:

 1時間目は,8月24日に公表された調査結果を県としてどう分析し,今後の小中学校理科の授業改善にいかにつなげるかについて説明していただいた。2時間目は,全国学力学習状況調査で毎年トップ水準の学力を示している福井県から講師を招いて,福井大学のCST事業の取り組みや,福井県の学校の様子や特徴的な理科教育の取り組みを説明していただいた。3・4時間目は,小中学校の認定CST,CSTマスターの教諭から,児童・生徒と教員がより理科を好きになるためにどのような工夫をしているか,日頃の実践を紹介していただいた。

受講生レポートから:

-本県の児童の課題として,基本的な知識の定着がなされていないこと,特に実験観察の技能に関する部分が弱いことが再度確認できた。また,考察したことを記述することにも課題があることがわかった。授業において以下に留意すべきである。①知識の確実な定着を図るため,実際に観察した事実を言葉と関連づけてとらえる指導を行う。②学んだことを適用できるようにするために,獲得した知識を身のまわりの事象に当てはめて考える思考過程を言葉で整理することを意識する。③構想する力をつけるため,実験を開始する前に結果の見通しをもち,その内容を相互に発表・説明するなどさせる。予想が一致した場合に得られる結果を見通して実験計画を立てさせる。④批判的思考をつけるため,予想と結果を照らし合わせ,一致しなかった場合には予想をふり返らせたり,見直したり,友だちの考えを参考にさせることによって,自分の考えを修正し,結果から適切に考えられるようにする。⑤三現(現地,現物,現人)を大切に授業づくりを行う。

-福井の風土である。「孫育て」という言葉からもわかるように,祖父母による教育など,学校,家庭,地域が1つになって子どもを育てるという風土,そして,教師を信頼し,落ち着いた学校環境の中で,当たり前のことを当たり前にできるという風土は子どもたちの学力の形成に大きな役割を果たしているのではないかと感じた。2つ目は,教員の採用形態である。教員として校種を問わず採用し,小,中,高校間で異動があるということは,教科の高度な知識だけでなく,様々な子どもたちに対応する教員としての力量が必要となる。そのような教員が指導にあたれば,子どもたちの学力が高まることも納得できる。3つ目は,全県で統一された教科書の使用と,独自教材の開発である。教科書が同じで変わらないということは,全県単位で教材研究の継続と相互理解,蓄積ができるということである。このことにより,県内での教科指導の質に大きな差が生まれることなく,上位層,下位層が少なく,レベルの高い中間層が多いという福井の現状があるのではないかと感じた。

-井形先生による理科授業に関する講演で特に参考になったのは,ノート指導である。①授業後に児童自身にその授業の題名をつけさせることで,学んだことをふりかえり,要約させるとともに,教師がその児童の理解度を把握することができる。②1ページ目は空けておき,全部書き終わったら目次をつくること。③ノートの右すみに印をつけ,その位置によって自分の理解度を一目でわかるようにする理解度メーター。④紙面を4分割し,記入する内容によって場所を変えること,1ページにまとめること。⑤まとめ終わったところまで右下を切り,どこまで記入したかがすぐにわかるようにすること。

-松井先生「基礎・基本・安全」を重視した児童・教員がより理科を好きになるための工夫では,話し合い活動を取り入れたり,探究活動のステップを明確にしたりして,児童がより理科を身近に感じるように工夫されている。また,理科室の安全指導を徹底することで,理科の苦手な先生の不安を解消する取り組みが素晴らしい。理科室のラベルに名前や写真だけでなく,使い方を3行にまとめて掲示してあるのが参考になった。教材研究にも一緒に取り組んでいく姿勢を見せることで,不安を好きにさせるためのしかけをしていくことが大切だと感じた。               

(文責:小倉 康)